片流れの屋根のメリット・デメリット!雨漏り対策やメンテナンス法も解説
おしゃれでスタイリッシュな片流れ屋根にしたいけれど、雨漏りや外壁が劣化しやすいなどデメリットが気になっている方も多いのではないでしょうか。
片流れ屋根はデザイン性が高く、太陽光発電システムとの相性の良さなど、実用的なメリットが豊富ですが、いくつかデメリットも存在します。
この記事では、片流れ屋根の特徴や、家を建てる前に知っておきたいメリットやデメリットなどを紹介します。
片流れ屋根でのトラブルを未然に防ぐための雨漏り対策や、効果的なメンテナンス方法も解説するため、理想の家づくりの参考にしてみてください。
当社では無料で屋根などの診断を行っています。お気軽にお問い合わせください。
片流れ屋根とは?
片流れ屋根とは、一方向に傾斜したシンプルな形状が特徴で、以前は倉庫や物置に多く採用されていました。
しかし、モダンでスタイリッシュな見た目から、一般住宅にも取り入れられるようになり、今では非常に人気の高い形状です。
外観の美しさだけでなく広い屋根裏スペースを活用したり、太陽光発電システムを効率的に設置したり、機能性の高さも魅力の一つといえます。
片流れ屋根のメリット
「住宅は見た目だけでなく機能性にもこだわりたい」という方も多いのではないでしょうか。
片流れ屋根は太陽光発電の効率が高く、建築費やメンテナンスコストを抑えられるなどメリットが多くあります。
屋根の形状選びでお悩みの方は、片流れ屋根のメリットを知り、家づくりに活かしましょう。
建築費やメンテナンスコストを抑えられる
片流れ屋根は極めてシンプルな構造のため、初期の建築費だけでなく、長期的なメンテナンスコストも抑えられ経済的にメリットが大きい。といえます。
切妻屋根や寄棟屋根は接合部が多く、複雑な屋根板金作業が必要になりコストがかかります。
一方、片流れ屋根は一方向に傾斜するシンプルな構造のため、接合部が少なく材料費や施工時間が削減でき建築コストを安く抑えられます。
使用する屋根材や外壁材によって費用は変動しますが、一般的な屋根形状と比較して片流れ屋根は50万~60万円ほど安く導入することも可能です。
また、雨樋も一方向に取り付けるだけで済むため、材料費や工事費だけでなくメンテナンスにかかる維持費が節約できます。
片流れ屋根は建築からメンテナンス時まで、長期的にコストを抑えられます。
モダンでオシャレな外観
住宅を建てる際に、外観にこだわる方も多いのではないでしょうか。
片流れ屋根は、住まいに洗練されたモダンな印象を与え、特に若い方に人気のデザインです。
ひと昔前は切妻屋根が主流でしたが、令和5年度には片流れ屋根が全体の40%以上を占めており、年々人気が高まっています。
また、デザイン性や機能性の高い住宅は資産価値を維持しやすく、住み替えを検討している方にもおすすめです。
太陽光パネルを最大限活用できる
太陽光発電システムを最も効率よく活用するには、片流れ屋根は理想的な形状です。
片流れ屋根は屋根全体が一方向に傾斜しているため、太陽光パネルを設置するための広大な面積を確保でき、最大限に搭載できます。
特に、最適な勾配で設定し、南向きに配置することで、日照時間を長く確保し、太陽光を最も効率よく集めることが可能です。
同じ敷地面積の場合、切妻屋根に比べて約2倍の太陽光パネルを設置できます。
また、安定した太陽光発電によって、月々の電気代を大幅に節約することも可能です。
効率の良い発電は太陽光パネルの向きや勾配が重要となるため、設置を検討している方は、事前に専門業者へ相談し、最適なプランを立てましょう。
屋根裏スペースを広く確保できる
片流れ屋根は、デッドスペースになりがちな屋根裏を有効活用し、住居空間を広く確保できます。
「収納が足りない」「もっと開放的な空間が欲しい」と、ライフスタイルや家族の増加によって住居スペースを確保したいという方も少なくありません。
片流れ屋根は一方向への傾斜によって、屋根と天井板の間に広い屋根裏スペースが発生します。
小屋裏収納部屋として活用したり、窓を設置して通常の部屋として使用することも可能です。
注意点として、小屋裏は以下の条件を満たしていない場合、延床面積に含まれてしまい固定資産税が増加します。
- 天井高140cm未満
- 面積が階下の1/2までの広さ
屋根裏スペースを活用する際は天井高や面積の条件を確認し、住宅メーカーと相談して最適なプランを立てましょう。
片流れ屋根のデメリット
メリットの多い片流れ屋根ですが、構造上他の形状の屋根よりも雨漏りのリスクが高く、湿気が溜まりやすいなどのデメリットもあります。
片流れ屋根を選択して後悔しないよう、採用を検討する前にデメリットをしっかりと把握し、適切な対策を講じることが重要です。
雨漏りのリスクが高い
片流れ屋根は構造上、他の屋根形状に比べて雨漏りリスクが高い傾向にあります。
通常、屋根の形状が複雑なほど、接続部分などから雨漏りが起こりやすくなります。
しかし、片流れ屋根は屋根の頂上付近に落ちた雨水が、外壁に向かって直接流れる特性を持っています。
屋根の裏側を伝った雨水が、屋根と外壁の隙間から建物内部に浸入する場合があり、雨漏りにつながります。
特に、屋根の棟(むね)部分や、軒天(屋根の裏側)と外壁との接合部の防水処理が甘いと、塗装の劣化がなくても雨漏りに繋がるケースが少なくありません。
最近人気が高まっている軒が出ていない「軒ゼロ」の住宅では、雨水が直接外壁に当たりやすいため、さらに雨漏りリスクが高まります。
片流れ屋根を選ぶ際は、雨漏りリスクがあることを十分に理解し、設計・施工段階での徹底した対策を立てましょう。
風の影響を受けやすい
片流れ屋根は形状上、風の影響を受けやすいため、強風時には注意が必要です。
屋根にはさまざまな形状がありますが、傾斜のある面数が多いほど、風の影響を受けにくくなります。
しかし、片流れ屋根は一方向への傾斜となっており、傾斜面が1面しかありません。
風の影響を1面で全て受け止めてしまうため、強風時に屋根材の浮きや剥がれ、最悪の場合には屋根全体の破損に繋がる可能性があります。
台風の多い地域や年間を通して風が強い場所に家を建てる場合は、ガルバリウム鋼板などの耐風性の高い屋根材を検討しましょう。
屋根や外壁が劣化しやすい
片流れ屋根は他の形状の屋根に比べて、屋根や外壁が劣化しやすいため紫外線や風雨対策が必要です
軒が一方向にしか伸びていない片流れ屋根は、残りの3つの外壁面は紫外線や風雨の影響を大きく受けてしまいます。
【主な劣化症状】
- 塗装の剥がれや変色
- ひび割れ
- コーキング部分の劣化
- 雨漏り
また、屋根の傾斜が一方向にのみあるため、流れる雨水の量が増加し、屋根材自体の劣化も進みやすくなります。
片流れ屋根は屋根や外壁が劣化しやすいため、耐久性の高い外壁材の使用や、適切な防水対策をおこないましょう。
換気性能が弱い
片流れ屋根は通常の屋根に比べ、換気性能が弱く湿気が溜まりやすいため注意が必要です。
一般的な三角形の屋根は、二つの屋根面を利用して両側に換気口を設置し、風通しを確保します。
しかし、片流れ屋根は一方向にしか傾斜がないため、換気口を設置できる場所が限られ、一方向にしか風が通り抜けません。
そのため、屋根裏などに湿気が溜まりやすく、建物に使われている木材が劣化したり、カビが発生したりするリスクが高まります。
片流れ屋根を選ぶ際は湿気が溜まらないよう、換気性能の強化をするなど対策を立てましょう。
雨樋への負担が大きい
片流れ屋根は雨水が一方向に集中するため、雨樋に大きな負担がかかり破損のリスクが高まるため注意が必要です。
一般的な屋根の場合、雨水は2方向や4方向に分散して流れるため、雨樋への負担は軽減されます。
しかし、片流れ屋根は降り注いだ全ての雨水が、一つの雨樋に集中して流れ込んでしまうため必然的に負担が大きくなります。
ゲリラ豪雨のような短時間の集中豪雨時には、雨樋の負荷は一層増大してしまい破損や詰まりが発生するリスクが高まります。
雨樋が正常に機能しなくなると、雨水が適切に排水されず、屋根や建物本体へ直接流れ落ちてしまい、雨漏りや外壁の劣化といった深刻なダメージに繋がる恐れがあるため注意が必要です。
片流れ屋根を採用する場合は、雨樋の定期的なチェックやメンテナンスをおこないましょう。
北向きの傾斜では日照を得られない
「片流れの屋根にして太陽光発電を取り入れたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
傾斜面が北向きの片流れ屋根の場合、日照をほとんど得られず、太陽光発電の効率は大きく低下します。
また、屋根には日光を吸収して屋根裏の湿気を飛ばしたり、冬場に家を温めたりする役割もあります。
北向きの傾斜屋根では日照が得られず、屋根の重要な役割を十分に果たせません。
地域によっては「北側斜線制限」といった建築規制により、近隣の日照を確保するため、住宅の高さによっては屋根の傾斜を北向きにせざるを得ないケースもあります。
片流れ屋根は太陽光の恩恵を最大限に受けるためにも、建築規制を事前に確認し、屋根の向きを慎重に検討しましょう。
片流れ屋根のデメリット対策
片流れ屋根は雨漏りのリスクや換気問題などさまざまなデメリットがありますが、対策を立てることで十分に解決できます。
ここでは、片流れ屋根特有のデメリットを克服し、後悔なく理想の住まいを手に入れるための具体的な対策法を詳しく解説します。
雨漏り対策
片流れ屋根の最大のデメリットである雨漏りのリスクは、適切な設計と高機能な防水対策で防ぐことが可能です。
片流れ屋根で発生する雨漏りの多くは、屋根の裏側を伝った雨水が、屋根と外壁の接合部分から建物内に浸入することによって起こります。
そのため、屋根材の下に敷く「ルーフィング(防水シート)」の選定が非常に重要です。
「透湿防水ルーフィング」は防水性能と水蒸気を透過する透湿性能を兼ね備えているため、雨水の浸入を防ぎつつ、屋根裏の湿気もこもりにくくします。
高耐久の透湿防水ルーフィングは耐久年数が50年と長いため、10年ほどしか持たないシーリング材を使用するより効果的です。
また、ケラバと呼ばれる屋根の端部にも、専用の水切り板金やシール材付きの部材を設置することで雨水の吹き込みを防げます。
片流れ屋根は希望に合わせて勾配を選択できますが、最適な勾配設計も重要です。
雨漏り対策を重視したい方は5寸勾配以上 (約16度)に設計すると、雨水がスムーズに流れて雨漏りのリスクを低減できるためおすすめで
す。
>>片流れ屋根のおすすめ勾配は?後悔しないためのポイントを解説
雨漏り対策は専門的な知識と技術を要するため、信頼できる業者に依頼し、細部まで徹底した施工をおこなってもらいましょう。
強風対策
風の影響を受けやすい片流れ屋根は、ガルバリウム鋼板のような軽量で耐風性の高い屋根材を使用した適切な強風対策が不可欠です。
片流れ屋根は風が低い側から吹き上がった際に、屋根全体に揚力(持ち上げる力)が発生しやすい構造をしています。
強風による揚力は屋根材の浮きや剥がれ、最悪の場合には飛散する原因となります。
特に、日本の台風シーズンや地域によっては常に強い風が吹く場所もあるため、この風圧への対策は非常に重要です。
ガルバリウム鋼板は瓦やスレートといった他の屋根材に比べて非常に軽いため、強風による屋根材の浮き上がりや、建物全体への負担を軽減します。
湿度対策
片流れ屋根は湿気がこもりやすいため、野地面通気と透湿ルーフィングを組み合わせるなどの対策が有効です。
換気口の設置が一方向に限られる片流れ屋根は、屋根材と野地板の間に空気層を設けて換気を促す「野地面通気」工法を取り入れると、屋根内部にこもった湿気を外部へ排出できます。
さらに、野地面通気工法と透湿ルーフィングを組み合わせると、野地板の結露や腐朽を防ぐ効果が期待できます。
メーカーによっては透湿ルーフィングが使えない場合もあるため、その際は北面が短い切妻屋根など、湿気対策に配慮した屋根形状を検討することも有効です。
片流れ屋根の湿度対策は、設計段階で専門家と相談して最適な工法を導入しましょう。
換気対策
片流れ屋根は換気対策をおこなって、屋根裏の劣化や腐食・カビを防ぎましょう。
換気棟を多く設置して排気量を増やしたり、軒天換気を全周に設置したりすることで、効率的な空気の流れを作り出せます。
万が一、自然換気だけでは不十分な場合、送風ファンなどを設置して強制的に換気を促す方法も有効です。
特に軒ゼロの片流れ屋根の場合、専用の換気部材を設置しますが、雨水浸入を考慮して換気能力が低くなっているため、設計段階から入念な検討が必要です。
片流れ屋根のメンテナンスのポイント
片流れ屋根は湿気が溜まりやすく、雨漏りのリスクもあるため定期的な点検と適切なメンテナンスが非常に重要です。
ここでは、片流れ屋根で雨漏りした場合や、定期点検などメンテナンスのポイントを解説します。
片流れ屋根が雨漏りした場合
雨漏りは住まいの耐久性を著しく損なうため、表面だけでなく、原因を特定し根本的な対策が求められます。
片流れ屋根で雨漏りが発生した場合、雨水が浸入した野地板が湿気を含み、ルーフィング(防水シート)も傷んでいる可能性があります。
既存のルーフィングが劣化している場合は、より防水効果と換気機能が高い透湿ルーフィングへの交換がおすすめです。
片流れ屋根は屋根の頂点付近や外壁との接合部から雨水が伝い、内部に浸入するケースが多く見られます。
表面的な補修だけでは、根本的な解決にはならず、繰り返し雨漏りが発生するリスクが残ります。
雨漏りを発見した場合は、早急に専門家に相談し、修繕してもらいましょう。
片流れ屋根の定期点検をおこなう
片流れ屋根の美しさと耐久性を長く保つには、専門業者による定期的な点検が重要です。
屋根の軽微な不具合は放置してしまうと、大きなトラブルや高額な修理に繋がる可能性があります。
- 屋根材の剥がれや浮き
- 板金部材の釘の抜け落ち
- 屋根材・接合部の劣化
- シーリングの耐久年数の経過
台風やゲリラ豪雨などの影響を受けると、症状が急激に悪化して屋根材が広範囲に剥がれたり、板金部材が飛散したりといった甚大な被害に発展してしまいます。
特に、片流れ屋根は屋根と外壁の接合部などが弱点部分となるため、重点的に点検してもらいましょう。
なお、屋根の点検を自分で確認することは非常に危険なため、セルフ点検は下からの目視程度にとどめます。
片流れ屋根は定期点検をおこない、大きなトラブルにならないうちにメンテナンスをおこなっておきましょう。
切妻屋根にリフォームする
「屋根の痛みが激しい」「片流れ屋根の雨漏りがなかなか止まらない」という場合は、切妻屋根へのリフォームがおすすめです。
片流れ屋根は棟部分や軒天と外壁との接合部から雨漏りしやすく、一か所にのみ設置されている雨樋も雨水の負担が大きく不具合も出やすくなっています。
そのため、切妻屋根にリフォームすると雨水が分散して流れ、雨漏りリスクや雨樋の負担を大幅に軽減させられます。
しかし、中には「片流れ屋根のデザインがいい」「太陽光発電システムなどの恩恵が少なくなる」と感じる方も多いでしょう。
既存の片流れ屋根の長い面を活かしながら、反対側に短い屋根を追加すれば、既存のデザインや機能性を残しつつ切妻屋根へリフォーム可能です。
片流れ屋根から切妻屋根への葺き替えリフォームの費用相場は、100万~200万円程度です。
度重なる雨漏りの補修費用やメンテナンス費用、建物へのダメージを考慮して検討すると、非常にコストパフォーマンスのよいリフォームとなります。
片流れ屋根の雨漏りにお悩みの方は、切妻屋根にリフォームして、根本的な解決を目指しましょう。
専門の業者に依頼する
片流れ屋根のメンテナンスは、雨漏りの根本原因特定と適切な修理のため、専門業者への依頼が重要です。
雨漏り修理や屋根のリフォームを検討する際、依頼できる業者は多岐にわたります。
しかし、片流れ屋根特有の雨水の流れや接合部の弱点を正確に把握し、素材に合った対応をしてもらうには、専門的な知識と経験が必要です。
屋根材がガルバリウム鋼板であれば板金業者、瓦であれば瓦専門業者に依頼すると、素材に合った最適なメンテナンスをおこなってくれます。
また、雨漏りしている部分だけをすぐに直したいなら、雨漏り修理の専門業者に相談するなど、修理の範囲で業者を選ぶのも一つの方法です。
しかし、屋根全体の劣化状況の確認や、片流れの屋根から切妻屋根への葺き替えや葺き直しなどの大規模なリフォームは、屋根工事の専門業者に依頼したほうがコストや工事の品質面で安心できます。
片流れ屋根のメンテナンスは特性を充分理解し、最適な施工をおこなってくれる専門業者に依頼しましょう。
まとめ
片流れ屋根はモダンでオシャレな外観や建築費の削減、太陽光パネルを最大限活用できるなどさまざまなメリットがあります。
一方、雨漏りのリスクが高く屋根や外壁が劣化しやすいなど、デメリットもあるため自宅の屋根へ採用しようか悩む方も多いでしょう。
しかし、高機能な透湿ルーフィングの使用や水切り板金の設置など、対策を講じることで十分に克服できます。
片流れ屋根の家づくりは、メリットを最大限に活かしつつ、デメリットを最小限に抑えるための対策や計画が重要です。
雨漏り対策やメンテナンスをおこなう際は、片流れ屋根の知識や施工実績の多い屋根工事の専門業者に依頼しましょう。